●新着情報20020926

障害者差別禁止法をめぐり、熱い議論交わされる
−「障害のある人の権利と法制度を考える」開催−

 2002年8月31日(土)、最終年記念フォーラム(記念フォーラム)のキャンペーン事業の一環として、「障害のある人の権利と法制度を考える」をテーマに「東京フォーラム」が開催されました。会場となった全社協・灘尾ホールには、記念フォーラム関係者を含め300人をこえる参加者が集い、障害者の権利保障や差別禁止に係る法制度への関心の高さがうかがえる盛況ぶりでした。
 
 はじめに主催者を代表して、記念フォーラム組織副委員会の河端静子氏(日本障害者協議会代表)が挨拶、国連に「障害者権利条約特別委員会」が設けられ、その制定にむけた協議が開始されていることに触れ、「国際的な動向も視野におき、わが国における障害者の権利法の実現について、ともに行動していきましょう」と力強く語られました。

 続いて、記念フォーラムキャンペーン委員長の松友了氏(全日本手をつなぐ育成会常務理事)の基調報告では、当企画が記念フォーラムの「バリアフリーキャンペーン」の一環であることが報告され、今回のシンポジウムについて「障害者の権利法をめぐっては各団体で温度差はあるが、それぞれ意見を戦わせながら、次の行動へむかうエネルギーを蓄積することが今日の狙いである」として、「自分たちの思いを実現していくためには、内輪だけの論理・議論をこえて、国民に届く論理を組み立て、理解や共感、支援を勝ち取っていかなければならない」と企画責任者としての思いが参加者に伝えられました。

■2つの講演
 午前のプログラムは、記念フォーラム組織委員長の八代英太氏(衆議院議員)による「『ADAの衝撃』ふたたび」ならびに東京アドボカシー法律事務所の池原毅和弁護士による「世界の障害者差別禁止法の現状と課題」の2つの講演が行われました。

 八代氏からは、障害をもつ米国人法(ADA)成立をめぐる当時の状況が詳しく説明され、障害分野における自身の活動経過を交えながら、ADAの規定とわが国の障害者施策の現状比較が語られました。また、わが国における差別禁止法の問題については、日本国憲法に「法の下の平等」規定の存在に触れ、「日常的な差別問題については障害者基本法で謳う」として、「障害者基本法が成立して10年が経ち、大幅な見直しが必要。すでにその作業を進めており、来年度の通常国会には骨格を示したい。拘束力を持つ法律を作るためにも議員立法で提案したい」と具体的なスケジュールを示しながら、その熱意が語られました。

 池原弁護士からは、障害者への差別禁止法について「世界では40数カ国で策定されている」とし、とりわけADAの理念について説明、わが国でも福祉的立場からの「パラダイム転換の必要性」が語られました。そのうえで「日本で障害者への差別禁止法を作っていく場合、障害者基本法の手直しでは不十分」として、障害者差別禁止法(JDA)の必要性が強調されました。
また、障害者差別禁止法の発展段階について説明、第1段階は「憲法等に規定されること」、第2段階は「『差別とは何か』が具体的に法律に明記されること」、第3段階は「裁判所以外の第3者機関が設けられ『差別』の判断がなされるようになること」、第4段階は「『差別』の改善・是正措置を求める活動に加わることができること」と話されました。日本の現状については「障害者への差別を禁止する明文規定もなく、世界から見れば1950年代の水準」とされ、わが国における障害者差別禁止法制度への取り組みの遅れが厳しく指摘されました。

■傍聴団報告・フォーラム
 午後のプログラムは、7月末から8月初旬にかけて国連本部で開催された「障害者権利条約特別委員会」に派遣された傍聴団による報告から再開、傍聴団メンバーの三澤了氏(DPI日本会議事務局長)から、傍聴団派遣の目的や特別委員会の経過、傍聴の感想、特別委員会の今後のスケジュール等が報告されました。傍聴の感想として三澤氏は「日本政府が国連代表の大使による消極的な発言姿勢がみえる中で、政府代表団にNGOが組み込まれ、NGOの考え方をベースに発言している国もあったことが、とくに印象的、衝撃的だった」と話されました。

 プログラムの最後は「障害者の権利法・差別禁止法に関わる取り組み」をテーマに、パネルディスカッション形式による討議が行われました。
 障害者差別禁止法(JDA)を実現する全国ネットワークの伊東弘泰氏からは「訴訟ができるような法律が必要。障害者基本法では役に立たない。法律制定には障害種別や立場の違いを越えて一致団結することが大事。社会全体に受け入れられる法律であることも重要」と迫力をもって語られました。
 DPI日本会議の金政玉氏からは「脱施設、地域生活への移行といっても、生活環境が整備されず施設生活を選ばざるを得ない状況がある。その状況を本格的に変えていくスタートラインが障害者差別禁止法の実現である」とJDAの必要性が強調されました。
 全日本ろうあ連盟の黒崎信幸は、自動車運転免許を例に「欠格条項が廃止されても適正検査で落とされる。聞こえるか聞こえないかではなく、個々人の能力や努力を認めるべき」と道路交通法改正の矛盾点が指摘され、「今の社会は障害があるというだけで個々人の能力や努力を認めない。社会を変えて行かなくてはならない」とされました。
 日本盲人会連合の時任基清氏からも「絶対的欠格事由は廃止されたが、結局省令で従来と同じ問題が起こっており、医師免許はとれない」と欠格条項廃止後の問題点が指摘されました。
 全国精神障害者家族会連合会の江上義盛氏からは「精神医療や精神保健福祉は少しずつかわってきたが、精神障害者への差別や偏見は20数年前とほとんどかわっていない」と精神障害者をめぐる厳しい現実が伝えられ、「障害者団体は差別禁止にむけて小異を捨て大同団結すること必要」と関係者、参加者に訴えられました。
 全日本手をつなぐ育成会の野沢和弘氏からは、知的障害者が日常生活で受けている犯罪行為を例に「差別禁止法の必要性を一番感じている」として、「JDAの問題を一般社会にむかって説得力のある言葉で発する必要がある」とマスコミの立場からの視点も交えて語られました。

 その後、フロアから5人の指定発言者(高山弘氏/日本身体障害者団体連合会、東川悦子氏/日本脳外傷友の会、石井政之氏/ユニークフェイス、野村茂樹氏/日本弁護士連合会、堀利和氏/参議院議員)がそれぞれ社会生活で感じている、あるいは実際に受けている差別あるいは差別的な事例や専門的な立場からの報告がなされ、異口同音にJDAの必要性が訴えられました。

 最後に司会の桃山学院大学の北野誠一氏から「JDAは障害当事者が自分達で考え、提案することが必要。JDAを勝ち取るまで、全国で同様な企画を展開することが重要」として閉会されました。


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