記念事業に相乗効果を

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「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラム
総務・企画委員長 藤井 克徳



■10年の集約と次代の戦略テーマ創りを


 「国連・障害者の10年」(1983〜1992)を受け継ぐ形で展開されてきた「アジア太平洋障害者の10年」(1993〜2002)も、余すところ1年余となってしまった。アジア域内を巡回する方式で「キャンペーン会議」を開催し、昨年までにすでに8カ国でさまざまな企画が繰りひろげられてきた。また、9年目の本年はベトナムで開催されることになるが、最終年を明年に控えこれまで以上の盛り上がりが期待されている。

 拡がりや深まりという点ではいまひとつの感もあるが、それでも10年間にわたって毎年アジアの障害分野の関係者が一堂に会すこととなり、このことの意義は少なくないものがあろう。キャンペーン会議の開催国はもとより、国連ESCAPにおける障害分野への対応にも多分に好影響を及ぼしているのである。

 こうした経緯を踏まえて、いよいよ最終年を迎えることになった。何らかの形で10年間を集約したいものである。集約のみではなく、次なる10年、20年を見据えた新たな戦略テーマを創り出していくための跳躍台とすることによって、最終年の意義はさらに増幅されることになろう。

■障害者権利条約の採択に弾みを

 最終年の意義や目的についてはいろいろな形で照会されており、別譲ることにする。個々では、改めて「次代の戦略テーマ創り」についてそのポイントを記してみたい。

 大きく分けて3点あるが、その第1は「障害者の権利条約」の国連・採択につなげていくことである。国際条約とは、それぞれの国会で批准した場合に憲法と法律の間に位置する極めて拘束力の強い規定となっていくのである。条約との整合性が問われ国内法の改正に弾みがつくことは必至である。すでに関連した動きが散見されるが、まだまだ部分的で組織だったものとはなっていない。アジア地域からも、「まとまりのある声」をあげていきたい。

 第2は、ポスト「アジア太平洋障害者の十年」をどのように設定していくかということである。「アジア太平洋障害者の十年」といった共通年限は、それ自体に求心力を備えるもので、引き続き現実的で魅力的なテーマと具体的な形態(方法)の設定が期待されている。かつて「アジア太平洋障害者の十年」を設定する際、各国政府や国連ESCAPとの事前調整に2年間近くを要した。ポスト問題について早急に方向性を見いだし、最終年事業を通して新たなテーマの準備を図っていく必要がある。第3は、わが国の障害者施策の拡充につなげていくことである。新たな(第3次)「障害者に関する長期計画」の策定が準備されようとしているが、その内容は定かではない。高水準の数値目標を含め良質の計画としていくためには、分厚い世論形成が決定的な意味をもつことになろう。世論づくりを含め、最終年を通して新長期計画策定の基礎をつくっていきたい。

■個々の事業の成功と全体につながりを

 さて、多様な目的を包含する最終年であるが、次のような事業・企画で具体化が図られていくことになる。(1)3つの国際会議、(2)3つの国内キャンペーン、(3)関連企画の開催(第25回総合リハビリテーション研究大会、国際職業リハビリテーション研究大会)、(4)国連ESCAP閣僚級会議の諸事業で、これらが北海道(札幌)ならびに関西(大阪・滋賀)を舞台に繰りひろげられることになる。

 これら1つひとつの事業をいかに成功させていくかが問われるが、同時に記念事業全体がつながり合いトータルとしての相乗効果を高めていくものでなければならない。総務・企画委員会の役割は、記念事業全体に流れをつくっていくことであり、わけても相乗効果をいかに生みだしていくか、ここに重点をおいた活動を展開していきたい。

(2001年度「JDジャーナル」9月号より)


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